高病原性鳥インフルエンザ海外報道抄訳集より
(外国コラム)
専門家達、鳥インフルの将来について語る−−今後のパンデミック対策のあり方
5年前に東南アジアでH5N1鳥インフルエンザ・ウイルスが家きんや人々を殺し初めて以来、いまだに専門家達はこの危険で、性格の変化が予知不能なウイルスが、今後世界に何をもたらすのか分かっていない。
アジア、中東、アフリカで多くの家きんや人々を犠牲にした後、2008年にウイルスはほとんど活動を休んだように思える。2003年以来発病した人の数は最も少なく、ほとんど見られなくなっているからだ。
こういう状況下では、次のような質問が出てくる。
H5N1ウイルスの活動は終息するのだろうか? 悲しいことに科学はインフルエンザウイルスがどのように誕生し、拡大し、他の種に感染するようになるか、または種を乗り越えられないか等、一切答えられない。知識が十分無いにも関わらず、インフルエンザの専門家達は、未だ、パンデミック対策の必要性を強調している。
「H5N1ウイルスが人のパンデミックを起こすか否か、誰も予知できない」、と米国CDCの”インフルエンザ監視と防止”部局の副責任者である
チム・ウエキ博士は語っている。
「私はH5N1ウイルスは未だ脅威的と考えている。しかし、それ以外にも脅威的なウイルスがいることを警戒する必要がある」、と同博士は付け加えた。そして2ヶ月の女児が12月遅くに、H9N2ウイルスに感染して香港で入院したことを指摘している。
H5N1ウイルスの不確かさのために、研究するインフルエンザ研究界や予防対策を懸命に考える公衆衛生当局の間に、多くのエネルギーが費やされて来たのは間違いはない。
「インフルエンザ疲労という言葉は、間違いなくこの数ヶ月または数年間に行われた、多くの対策の陰から出てきたと思う」、とWHOの”世界インフルエンザ対策計画”の責任者である
ケイジ・フクダ博士が語る。
「この3,4年間の実に大変な作業をやってきた過去を振り返ると、本当に、オォ!、本当に実にやったものだ、そして今我々は疲れきってしまった、そのように自分は思っている」
フクダ氏の説明では、H5N1ウイルスが1997年に初めて人に襲いかかって18人を発病させ、そして6人を殺した時、このウイルスがパンデミックを起こす可能性があることが示唆され、緊急に対処する必要があることが世界で叫ばれだした。
「そのとき我々はこのウイルスが何をもたらすのか、いつでも変異する可能性があるのか、全く分からなかったと言える。そして、自分が思うには、そうした不確実さが、信じられない程の量の対策に人々を駆り立てたのだ」と、フクダ氏は語る。
しかし
時間が経つに伴い、ウイルスが予想されたような時間的推移で変化してこないことが明らかになった。 2006年に世界の9カ国で115人が発病し、79人が死亡したが、2007年には、88人の発病で59人の死亡者数だった。そして2008年には、6カ国からそれぞれ40人と30人と減少した。
専門家は確かな根拠をもってこの推移を説明は出来ない。完全にウイルスの活動が終息してゆく兆候であるのか、それとも一時的現象であるのか。
「それは単に周期的現象だと思う」、と、英国の健康予防局(Britain's Health Protection Agency)の呼吸器ウイルス部の責任者である
マリア・ザンボン博士が語っている。
「注意を要すると思う。根拠あるデータは少なく、それらから長期的推論を行うのは危険だ」。
ザンボン博士は、この数年間に亘って東南アジアでインフルエンザBウイルスが2系統流行していることを指摘する。それは東南アジアだけの話で、世界の他の国々では1種類しか流行していない。しかし、いつか残りのBウイルスが世界の他の国でも流行するのは間違いはない。でも専門家はその理由と、いつ流行し始めるか予測は出来ないという。
「私の言いたいことの本質は、インフルエンザウイルスは非常に変異しやすいということだ…、それによって多くの予知不能な流行を起こす。だからインフルエンザウイルスに関しての、過小評価は危険だと言いたい」。そのようにサンボン博士は警告する。
いくつかの病原体は波を描くように、または周期的に活発化する、とミネソタ大学の”感染症研究と対策”センター長の
マイケル・オステルホルム博士は説明する。
同博士はH5N1ウイルスが人に感染するようになるには、相当の年月を要して変化を重ねる必要があるという。
現在はそのような兆候は見いだせていないと強調する。
多くの人は年単位でウイルス変化が生じると考える傾向にあるが、それは間違いで、さらなる年限を要する変異が必要であって、それには長期的警戒が必要なのだ、と同博士は語る。
WHOのフクダ博士は、ウイルス自体は変化していないので、感染率の減少は、
人々の行動が変容してきたためではないかと語る。
感染した家きんを排除する対策は強化されており、家きんへのワクチン接種は、結果的に人々がウイルスに接触する機会を大幅に減少している。
また感染国では、病的または死亡した家きんと接触することは、非常に危険なことであることを住民に啓発する教育プログラムが展開されている、と同博士は付け加えている。
ウエキ博士の心配 問題意識が薄れてゆくにつれ、新たに注意すべき課題が出てきている。
H5N1ウイルスによるパンデミックの可能性が低くなったという考え方は、新規患者の発生に対する監視力が低下することを意味する。医師達はH5N1ウイルス感染症に遭遇したとき、無数の他の原因による感染症に目を向け、H5N1ウイルスによるものであることを疑わなくなり、検査もしなくなる可能性が出てくる。
さらにウイルスは多くの系統に分かれ(またはクレードやサブクレード)、検査技術の改良が必要になってくる。もし、検体中に含まれるウイルス株が、当該検査所のシステムで検出できないものであったなら、検体は陰性と判断される。(誕生する多くの株に対する検査システムにいつもグレードアップされることが必要。抗体など:訳者)。
インフルエンザ専門の科学者達がウイルスの変化を監視し、そしてその謎に判断が出来ないでいる間、公衆衛生的対策は未解決な問題を抱えながらも対策に追われ続ける。
「問題の多くの根底にある本質は、十分対策は講じられただろうか、または、このような大変な努力が必要なのだろうか、ということに尽きると、自分は思っている」、とフクダ氏は本音を語る。
「多くの人々は対策は継続しなければならないことを知っているが、また同時にどのレベルの対策が維持される必要があるのか確信をもってはいない」。
H5N1にしろH9N2、または他のインフルエンザウイルスにしろ、パンデミックを発生する脅威は残っていることは明白だ。また対策に終わりは無いことも明白だ。しかし、この金融危機状況下の経済状態で、手がける必要のある多くの他の健康問題もあることも明白だ。
本当に重要なこととは、フクダ博士の本音「パンデミック対策には、本当に長期間に亘る努力が必要とされる」、と同博士は、世界が次のパンデミックに備えるべき努力に関して、このように表現している。
「そしてもし、我々が注意を完全に異なる他の問題に向けてしまうなら、これまで4年間築いてきたパンデミック対策の蓄積を失うことになる」。
「これまで考えてきた対策を、何度も繰り返し見直してゆくことは、正しいことなのだと思う…、それは正しくシーシュポスのようだ」と、同博士は終了することのない行為をテーマにしたギリシャ神話を引用した。
*:《ギリ神話》シーシュポス:大石を山頂に押し上げ, 転げ落ちるのを絶えず押し上げる罰を受けたコリントの邪悪な王.
Researchers ponder future of bird flu
CTV.ca, Canada
高病原性鳥インフルエンザ海外報道抄訳集
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